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- 411 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:17:07 ID:6jF+s4KZ
- 地元に帰る前日。
マミさんとの最後のデートの日。 集合は朝8時。
ゆっくり用意していいよ。と言った俺に、いいよあたしが早く会いたいんだもん。とマミさんが言ってこの時間になった。
今日の予定はカラオケ→水族館→観覧車だ。 ゆっくりデートがしたいと俺が言うと、マミさんが珍しくデートコースを考えてくれた。
カラオケでゆっくり過ごした後、水族館ででっかいマンボウが見たいと言い、最後にでっかい観覧車に乗りたいと言った。
でっかいでっかいばっかりで何ともマミさんらしいけど、すごく微笑ましい提案だった。
- 412 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:18:42 ID:6jF+s4KZ
- しばらくしてマミさんがやって来た。
俺を見つけると駆け寄ってきて、「ごめんね?待たせちゃった?」と聞いてくる。
俺は「うん、かなり待った」とふざけてみせる。 久しぶりにマミさんのつけマツゲを見た気がした。 そして、その足でカラオケまで歩いた。
- 413 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:20:18 ID:6jF+s4KZ
- しかし、カラオケに着いても俺はなぜか歌えなかった。
別れが目前に迫っている。 まだまだ一緒にいたいのに。
そんな気持ちを歌えるハズもなかったし、歌いたくなかった。 それに、マミさんに伝えたいことがたくさんある。 俺はそれを伝えることにした。
- 414 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:22:52 ID:6jF+s4KZ
- しばらくの間マミさんは俺のために歌ってくれた。
俺はマミさんの隣で一人塞ぎこんでた。 それに気付いたマミさんが声をかけてくれた。
マミ「どうしたの、大丈夫?」
俺はマミさんに今までの気持ちを話し始めた。 夏にマミさんが離れてからの俺の気持ちを…
俺「俺さ、姉ちゃんのことが怖かったんだ。姉ちゃんは俺の全部を否定した、否定された気になったんだ。
姉ちゃんに触れることもできない、一緒にご飯も食べれない、遊びに行くこともできない、話しかけることすらできない…もう何も姉ちゃんと繋がりがなくなって、全部を否定されて、怖かったんだ、それを実感するのが。」
マミ「違うよ、それは学校の中だけの話…」
俺「違わないよ!」 ダメだ、止まらない。
この日、この時までに溜め込んだ想いが溢れ出して止まらなかった。
- 415 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:24:45 ID:6jF+s4KZ
- 俺「何もできないじゃんか、そんなに否定されたら…つらいじゃんか、そんなに否定されたら…」
俺はマミさんに背を向けたまま涙を流した。
言葉にしようと思ってもできない気持ちや言葉にしたくない気持ちが出る場所を失って涙になって出てきたようだった。
その時、後ろからマミさんが抱きついてきた。 マミさんも鼻をぐずらせている。 俺は後ろから抱きついてきたマミさんの腕をつかんだ。
俺「ツラかったんだから…ツラかったんだから…」
マミ「うん…うん…」
俺「キツイこと言ってごめんね、ホントはあんなこと思ってないから。」
マミ「うん…うん…」
俺「ごめん…ごめんね?」
マミ「ううん、あたしもごめんだよ…いっぱいだいちゃんのこと傷付けた。」
俺「いいよ、そんなこと。俺は姉ちゃんに幸せになってもらいたかったんだ。だから、我慢したんだよ?」
マミ「うん…ごめんね?」
俺「でも、それよりも俺が…俺が姉ちゃんを幸せにしたかった。」
マミ「…幸せだったよ?」
- 416 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:26:23 ID:6jF+s4KZ
- 俺はマミさんの方へ振り返った。
マミさんと目があう。 涙で輝く瞳に吸い込まれる。
もう、言葉はいらなかった。
俺とマミさんはお互いがお互いを包み込むように抱き締めあい、キスをした。 やがて来る別れを惜しむように。
解り合えた喜びを分かち合うように。 いつまでも、いつまでもキスは続いた。
- 417 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:27:57 ID:6jF+s4KZ
- そして、俺とマミさんは惹かれ合うまま肌を重ねた。
俺は何度も何度もマミさんに囁いた。
俺「愛してる、愛してる」
「愛」の意味なんて未だにわからない。 ただ、その時感じた感情は…
マミさんの幸せを願い、マミさんを幸せにしたいと願い、幸せに満ちたあの感情は…確かに「愛」だったんじゃないかと今でも思う。
- 418 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:29:34 ID:6jF+s4KZ
- 時間は迫っていた。
別れの時間まで2時間。 もう水族館は諦め、観覧車に乗りに行くことにした。
電車に揺られ30分。着いた先は「海浜幕張」…
海浜幕張?
ここ…観覧車あったっけ?
俺は恐る恐るマミさんに聞いてみる。
俺「もしかして、『葛西臨海公園』じゃ…ない?」
マミ「あ、そうだ!」
マミさんの顔色が暗くなっていくのがわかる。 しまった、全部マミさんに任せたから行き先がどこか知らなかった。
でっかい観覧車といえば、葛西臨海公園かビーナスフォートくらいしか有名なところはないじゃないか。 ひとまず俺は平常心を保ち、マミさんに言った。
俺「とりあえず、ここから最短でいける路線だと帰りに間に合うか調べよう?」
マミ「う、うん」
マミさんはかなり慌てている。 当たり前だ、俺だってかなりドキドキもので冷静を装うのが精一杯だ。 時刻表を調べて計算をする。
- 419 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:30:54 ID:6jF+s4KZ
- …ダメだ、間に合わない。
マミ「ごめんね、ごめんね?あたし最後の最後で何してるんだろ…」
俺は混乱した頭をフル回転して考える。 出した答えは…
俺「このままだとアレだから、プリクラでも撮ってくか?」
だった。 最後の最後でお互いに何をやってるんだろうと思う。 それでも、仲良くプリクラを撮ることができた。
- 420 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:34:31 ID:6jF+s4KZ
- いよいよ、最後の時が迫る。
寮に帰りつくギリギリの電車を駅のホームでマミさんと待つ。
俺とマミさんは手を繋ぎながら、何を話していいかわからず、ただ立ち尽くしていた。
その時、駅のライトに照らされて空中にキラキラと輝くものが…
俺「あ…雪?」
よく目を凝らさないとわからないが、確かに降っている。 この冬は今まで一度も降らなかったのに…
二人きりで立ち尽くしていたホームを白い粉雪が包み込む。 まるで、悲しみに立ち尽くす二人を優しく包み込むように…
この日、この時、この場所に初雪が降った。 悔しくも二人の最後のデートの日に…
マミさんは俺の腕をつかみ、俺とマミさんの距離がまた少し近付いた。
- 421 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:35:29 ID:6jF+s4KZ
- 寮の門の前。
ついに最後の瞬間。 俺はもう寮には入れないため、ここまでが限界だ。 もう、門限は過ぎている。
二人は向かい合って、手を繋いだまま離れられずにいた。 見つめ合う二人は、何をするタイミングもつかめずにいた。
何かを始めたら、すべてが終わってしまいそうな恐怖。 別れを惜しみながら、二人は時間を進めることしかできない。
- 422 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:42:36 ID:6jF+s4KZ
- ついに、マミさんが口を開く。
マミ「また遊びに来るでしょ?」
俺「うん、絶対来るから、その時は観覧車乗ろうね。」
マミ「うん、約束ね♪」
…
…一瞬の沈黙。
マミ「じゃあ、そろそろ行くね?」
俺「うん…」
マミ「じゃあさ、1、2、3で一緒に振り返ろ?寂しいから…」
- 423 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
17:43:56 ID:6jF+s4KZ
- 俺「うん、わかった」
マミ「いくよ?」
俺・マミ「…1」
俺・マミ「…2」
俺・マミ「…3」
俺とマミさんは一緒に振り返り、そのままその場を立ち去った。 背中にマミさんの足音を感じながら、掌にマミさんの温もりを感じながら。
寒い冬の始まりを告げる初雪が二人の別れを見守っていた。
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