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- 268 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
01:47:00 ID:Wq4WGhOZ
- 四月某日。
今日はマミさんと初デート。 メールで話をしていて、お互いカラオケが好きだということがわかり、デートの約束をしたのだ。
デートの場所は寮の近くにあるカラオケハウス。 歩いて行ける距離なので、二人で並んで歩きながら、普段どんな曲歌うの?とかありきたりな会話を交わす。
それだけでも楽しくてしょうがない。 マミさんがいろんな話をしてくれて、俺は横で聞きながらたまに相づちを打つだけ。
それが二人のペースだった。 お互いこの頃には一緒にいることで緊張もしなくなっていた。
そして歩くこと10分、目的地のカラオケハウスに到着。
- 269 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
01:49:17 ID:Wq4WGhOZ
- カラオケに入ると誰が一番最初に歌うか探りあいが始まりませんか?もちろん、この時も同じことが起こりました。
俺「姉ちゃん、何か歌ってよ」
マミ「えっ!!だいちゃん歌いなよ、今日はあたしだいちゃんの歌聴きにきたんだからね♪」
そうですか、そうなんですか、その言葉で僕はもうノックアウトですよ、簡単に負けてしまうんですよ。
俺「わかったよ、でも俺バラードしか歌えないから、盛り上がらないけどいいの?」
マミ「いいよ、あたしバラード好きだもん♪」
あなたは元気な歌が一番似合いますけどね、ってまた頭の中でマミさんに語りかける… なかなか口にできないことってありますよね…
という訳で、俺は5分くらいカラオケの本とにらめっこしていた。
- 270 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
01:51:18 ID:Wq4WGhOZ
- 俺が一番最初に選んだ曲はTUBEの「虹になりたい」。昔やってた「未来日記(覚えてる人いるのかな?)」が大好きで、この曲は結構お気に入りなのだ。
マミさんの前で初めて歌う歌。
テーブル越しに向かい合わせで座っているマミさんに、歌ってる顔を見られるのが恥ずかしくてずっとテレビ(モニター?)を見ながら歌っていた。
そして、歌い終わると俺は恐る恐るマミさんの方に目をやる。
…(ドキドキ)
あれ?反応無し?はずしたかな?
…(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ)
マミ「上手!!だいちゃんそんなにうまかったの!?あたし感動したよ、もっと歌って!!」
その間(ま)はさすがに緊張しますから…
マミさんは笑顔だったが、いつもの無邪気な笑顔とは違って、大人っぽくて、少し色っぽい笑顔だった。 しかもちょっと瞳がうるんでるじゃないですか…
- 271 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
01:53:36 ID:Wq4WGhOZ
- 「涙は女の武器」というけれど、こんな使い方もあるのかと俺は思った。この武器はある意味凶器だった。
なぜなら、俺は続けて歌うしか道はなくなったからである。 ここで歌わなければ男が廃る。
というより、この状況で歌うのをやめる男は男じゃない(男性の方々ならわかってくれますよね?)。 俺はマミさんの凶器に見事に振り回された。
そして、その後も俺は必死でバラードを歌い続けた。
途中、俺は大事なことに気付いた。
部屋のテーブルが大きくて、向かい合わせに座っているマミさんとの距離が大きい… ここは、マミさんを隣に呼ぶしかない。
幸い雰囲気もいい感じだ。 よし、行くぞ!!
俺「ねぇ、そこ遠いからさ、隣おいでよ」 よし、噛まずに言えた…
マミ「うん…」
少し照れた感じで俺の隣まで来て座る。
よく言った俺!!まさに自分で自分を褒めてあげたい瞬間だった。
- 272 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
01:58:21 ID:Wq4WGhOZ
- そして、カラオケは続行。
俺は声が枯れるまで歌う覚悟で歌い続ける。 バラードしか歌わないからムードも良し。
?
ふと、手に温もりを感じる。
手つないできましたよ。
俺、少し動揺。 歌ってる途中だから何も反応できない。 とりあえず握り返す俺。
指と指を絡ませて手をつなぐ。
…これって恋人同士のつなぎかたじゃないですか!?
いや落ち着け、今はこの歌を歌い終えるのが先決だ!!…既にパニック状態の俺。
- 274 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
02:00:19 ID:Wq4WGhOZ
- やっと歌い終わりマミさんの方を見る。
振り返り俺の目を見るマミさん。
そんなうるんだ目で見ないでください…
沈黙を破り、マミさんが口を開く。
マミ「ごめんね、手ぇ汗ビッショリで」
自分の掌に意識をやると、確かに二人とも短い時間の間にものすごい汗をかいている。
俺「いや、俺体温高くてさ。すぐ汗かくんだ」
マミ「あたしも体温高いんだよね♪」
そう言ってマミさんは手を離した。 まだつないでいたかったけど、マミさんから離されたら仕方がない。
俺はまだ汗ばんだ手を少し握ってマミさんの手の温もりとお互いの緊張をかみしめた。
- 279 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:26:31 ID:Wq4WGhOZ
- その後沈黙するのが嫌だったので俺から話を切り出す。
俺「そろそろ姉ちゃんも何か歌ってよ」
マミ「えぇ〜、だいちゃんうまいからだいちゃんの前で歌うの恥ずかしいよ」
俺「そんなの気にしないから。俺は姉ちゃんの歌が聴きたいのさ」
マミ「えぇ〜、あたしヘタだもん」
俺「いいからさ、ね?」
マミ「じゃあ、わかった」
そう言ってマミさんは曲を探し出した。
マミ「ムード壊してもいいの?」
俺「いいよいいよ、そんなこと気にしないでさ」
マミさんはリモコンで曲を入れた。
- 280 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:28:34 ID:Wq4WGhOZ
- マミさんが選んだ曲はJUDY AND MARY(綴り間違ってたらスマン)の「over drive」
マミ「これ、あたしのテーマソングなの♪」
俺「そうなの?なんで?」
マミ「だって、元気な曲でしょ♪あたしにピッタリじゃない?」
俺「あぁ、なるほど」
確かに元気なマミさんにはお似合いな曲だった。前にも書いたように俺もマミさんには元気な曲がお似合いだと思っていた。
- 281 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:30:28 ID:Wq4WGhOZ
- ♪♪〜♪♪〜♪♪〜〜
短いイントロの後すぐに歌が始まる(この曲知ってる人ならわかってくれるハズ)
…
う〜ん…
…
うまいじゃん!!
当時、俺の女友達でここまで歌える人はいなかった。俺は少し感動したのを覚えている。
うまいのもそうだが、それ以上に綺麗な声をしているのが印象深かった。
抽象的に言うと、すごく透明な声と言うのだろうか。よく伸びて体の深いところまで入り込んでくるような感じがする。
たぶん、2時間くらい聞いていても全然飽きないだろう。
- 282 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:32:38 ID:Wq4WGhOZ
- そんなことを考えてる間に歌が終わった。
俺「普通にうまいっしょ、ヘタじゃないよ」
マミ「だいちゃんに比べたらヘタだよぉ」
俺「そんなことないよ」
こんな会話をしながらカラオケは終了し帰宅することにした。
俺は少しずつ確実にマミさんとの距離が縮まっていることに喜びを感じていた。 それと同時にマミさんの彼氏の存在がどうしても気掛かりで仕方なかった。
- 283 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:33:43 ID:Wq4WGhOZ
- その日の夜、俺たちはいつものようにメールをしながら今日のデートについて語り合った。
最初はやっぱりお互いがお互いを褒め合うことから始まる。しばらくするとこんな話題になった。
マミ「ねぇ、何か二人で歌える歌つくろうよ♪」
俺「デュエットするってこと?何かあるかな?」
マミ「ほら、チェルシーの歌歌ってる人とか、名前浮かばない…」
俺「ケミストリー?あれ両方男じゃん。」
マミ「じゃあ、男と女でデュエットできる歌ってある?」
実はこの話を持ち出された瞬間に思いついていた。
- 284 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
04:39:48 ID:Wq4WGhOZ
- HYの『AM11:00』
マミさんがHYが好きということも知っていたし、男と女でデュエットもできる。 これしかないと思っていた。
俺「じゃあさ、HYなんかどう?あれなら二人で歌えるっしょ」
マミ「いいよ、あたしHY好きだもん♪」
俺「決定ね、曲は『AM11:00』で。この曲しか知らないからさ(笑)」
マミ「わかった、あたし練習しとくね♪今度カラオケ行ったら一緒に歌おうね♪」
俺「オッケイ、俺も練習しとくわ」
こうして、二人の歌はHYの「AM11:00」に決まり、俺は何度も何度も聴いて覚えていった。 その後もメールは寝るまで続いた。
盛春(注)の陽気に俺の心は弾んだ。
注:盛春(もりはる)
春真っ盛り!な感じ。大地本人が作った言葉。
- 294 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
17:22:40 ID:Wq4WGhOZ
- 五月初旬。
GW最終日の今日、GW中に地元に帰省していた生徒達が寮に帰ってくる。
もちろん俺やマミさんも同じだ。
実はGW中俺はマミさんとのメールを極力控えていた。
理由はもちろん彼氏の存在だ。
やはり、どこかやましい気持ちがあったのは確かだ。
もし、俺とのメールでマミさんが彼氏と別れてしまったら、マミさんは落ち込んでしまうだろう。
俺だって、マミさんに嫌われてしまうかもしれない。
それだけはどうしても避けたかった。
そして今日、久しぶりにマミさんに会える。
- 295 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
17:25:17 ID:Wq4WGhOZ
- 地元から戻ってきたグループの仲間達がお土産を持ち寄ってくる。
それを男子は女子に渡す分を、女子は男子に渡す分を交換するため集まる。
チャンスはその時だ。
時間は少ないが、話ができるハズだ。
マミさんがGWに何をしたのかとか、俺がGW中に何をしたのかとか。
全部なんか話せないが俺はマミさんの笑顔が見れるだけでも十分だと思っていた。
それから、マミさんにお土産も買ってきたんだ。
以前マミさんと話してた時にマミさんが赤い色が好きだってこと、マミさんの赤い携帯にストラップがついてないってこと、覚えていたから。
だから、地元のアクセサリーショップとか小物屋を歩き回って作った、手先が無器用な割に良くできた携帯ストラップ。
赤いハートのストラップの周りに小さな星のアクセントを入れてある。
マミさんなら気に入ってくれると思う。
きっと、マミさんなら何でも受け入れてくれる気がしたから。
- 296 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
17:29:04 ID:Wq4WGhOZ
- そして、お土産交換の時がきた。
女子達の中にマミさんを発見。
話しかけようとするが違う男子と話していてなかなかタイミングがつかめない。
なんか、マミさんはどこかわざと俺と話すのを避けようとしてるみたいだ。
目線もわざとそらされてるのか?
そして、お土産の交換が終了。
…あれ?これで終わり?
待ってよ、まだ「久しぶり」すら言ってない!!
いっぱい話たいことがある。
いっぱい聞きたいことがある。
ストラップだって、渡したいのに…
去り際、マミさんは俺の方を振り返り笑顔を見せることもなく、少し寂しそうな顔をして去って行った。
- 297 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/23(金)
17:31:12 ID:Wq4WGhOZ
- その夜、俺はマミさんにメールした。
俺「何か、俺のこと避けてない?俺なんかした?」
少し時間をおいてマミさんから返事がくる。
マミ「だいちゃんは何もしてないよ。悪いのはあたしなんだ、彼氏いるのにだいちゃんと仲良くしたから」
大体こんな内容のメール。
俺は血の気がひいていくのがわかった。同時に強い眩暈。
当然の報いか。
マミさんに彼氏がいるのは知っていた。
知っていてマミさんに近付いたのだから。
それでも俺は納得できない。
納得できないけど、どうすることもできなかった。
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