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- 334 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:37:34 ID:6jF+s4KZ
- ある夜。
いつもの公園のいつものベンチで、いつものように二人で話をしていた。
いつものようにマミさんがいろんなことを話して、いつものように俺は隣で相槌をうつ。 マミさんは日常の些細なことをいっぱい話してくれる。
その度、俺は相槌をうってマミさんのことをまたひとつ知る。 マミさんの隣はすごく安心できて、このままずっと隣にいたいと何度も考え、何度も願った。
不意にマミさんの話が止まり、二人の間に沈黙が流れる。
俺がマミさんの顔を見ると、マミさんと目が合った。
少しうるんだ目に惹かれてしまう。
- 335 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:39:48 ID:6jF+s4KZ
- 俺「キスしていい?」
思わず言葉に出してしまった。 言ったことを認識した瞬間に、心臓が飛び出るくらいに速く鼓動が鳴る。
二人に再び沈黙が流れる。
俺「やっぱ、ダメだよね(苦笑)」
沈黙に耐えきれなくなって、マミさんから目をそらす。
嫌な沈黙。 何か言ってほしい。
マミ「いいよ♪」 その瞬間、俺の心臓が1秒程止まった気がした。 物凄い勢いでマミさんの方へ振り返る。
また、目が合った。 そして、さっきよりも速くなる鼓動。
- 336 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:42:04 ID:6jF+s4KZ
- 俺「ホントに?」
緊張を悟られないように低い声で聞くと、マミさんは小さく頷いた。
高鳴る鼓動を抑えられない。 俺はマミさんの肩を右手で引き寄せながら、そっと唇を重ねた。
1秒?1分?1時間?
時間の感覚がなくなってしまう。
- 337 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:42:47 ID:6jF+s4KZ
- 唇が離れると、お互いに見つめ合う。
今にも泣き出しそうな程、濡れた瞳。 マミさんが口を開く。
マミ「あたし、だいちゃんのことホントに大好きになってるんだよ♪」
たまらなくなってまたキスをする。
さっきの言葉が頭の中でこだまして俺の感覚を狂わせる。 マミさんの体温が更にそれを増長させる。 俺はまた、マミさんに落ちていった。
- 338 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:46:06 ID:6jF+s4KZ
- 七月某日。
俺は不安の中にいた。 理由はひとつ。 マミさんが連休を利用して実家に帰り、この日寮に戻ってくるのだ。
実家に帰るとマミさんは彼氏に会ってくるだろう。 だから、また俺と距離をとろうとするんじゃないかと思った。 それが不安でたまらなかった。
眠れない夜に悩まされながら、マミさんの帰りを待つ。
案の定、マミさんの俺に対する態度は一変した。
- 339 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:47:17 ID:6jF+s4KZ
- 明らかに避けられる。
メールをしても冷たい返事しか来ない。
『マミさんが帰って来たら驚かせよう』
『一緒に行こうって言おう』と思って、頑張って内緒でとったライブのチケット。
マミさんが好きなHYが出るから、きっと喜んでくれると思って信じてたのに。 これじゃ、言い出すこともできない。
ライブだけじゃなくて、まだまだいっぱいいろんな所に行っていろんな事をしたかった。 それなのに、マミさんは俺から逃げていく。
俺はマミさんに渡すハズだったチケットを一人眺めてはため息をついた。
- 340 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:48:43 ID:6jF+s4KZ
- 俺はマミさんと話がしたくて、いつもの公園のいつものベンチに呼び出した。
もちろん、マミさんと仲直りしたいからだ。
俺は先にベンチに座り、マミさんを待っていた。 初夏の暑さも今は何も感じない。 心の中はマミさんでいっぱいだった。
何を話そうか、どうしたらマミさんと仲直りできるか…いくら考えても答えは出ない。 マミさんは少し遅れてやってきて、いつものように俺の隣に座った。
俺は何から話していいかわからなくて、しばしの沈黙の後に、
俺「ごめんね、急に呼び出して」
と、当たり障りのない挨拶をした。 また二人の間に流れる沈黙。
- 341 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:50:47 ID:6jF+s4KZ
- 俺「ねぇ、俺と仲直りしてよ」
思い切って切り出した。
マミさんは考え込んでいる。 俺の不安は次第にふくらんでいく。
マミ「ごめんね、だいちゃんのそばにいることはできない」
俺の心臓が止まりそうになる。 飲んだ息が出てこない。
俺「それは彼氏がいるから?」
マミ「うん…」
マミさんは下を向いた。 また、沈黙が流れる。
俺の頭の中は、ほぼ真っ白になっていた。 それでも、マミさんと離れたくないから必死ですがりついた。
- 342 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:52:28 ID:6jF+s4KZ
- 俺「どうしてもダメなの?」
マミ「うん…」
マミさんの返事を聞く度、俺の心はどんどん追い込まれていった。
もう、俺に話せることはなかった。
何も言えないまま時間は無情に過ぎ去り、寮の門限の時間がきてしまった。
- 343 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:53:44 ID:6jF+s4KZ
- 何も言えないまま時間は無情に過ぎ去り、寮の門限の時間がきてしまった。
マミ「そろそろ戻らないと…」
俺「そうだね…」
ベンチを離れ、公園を後にする。
俺はマミさんの前を歩き、後ろにマミさんの足音を感じながらうつ向き歩いていた。
『これで終わりなのか?こんなあっけない終わりかたでいいのか?どうすれば…どうすればいい?』
俺にできることはひとつだった。
- 344 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:56:01 ID:6jF+s4KZ
- 俺は歩を止め、振り返った。
一瞬、躊躇するマミさん。
俺はマミさんの体を思い切り引き寄せ、マミさんにキスをした。
時間が止まる感覚。 ほんの一瞬のキスは、ものすごく長い時間に感じられた。 俺は唇を離すのが怖かった。
今ふさいでいる唇を離したら、その唇がどんな言葉を紡ぎ出すのかわからないから。
- 345 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:57:31 ID:6jF+s4KZ
- 俺は唇を離すと、マミさんの目を見つめた。
マミ「バカ」
俺「?」
マミ「バカバカバカ!」
俺「???」 俺はマミさんが何を言ってるのか、一瞬わからなかった。
マミ「離れられないでしょ…」
俺「…いいよ、離れなくて」 俺は精一杯の余裕の表情でマミさんに言った。
- 346 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
12:59:26 ID:6jF+s4KZ
- そして俺は振り返り、帰り道を進んだ。
すると、後ろからマミさんの声。
マミ「バカバカバカ」
俺「バカでいいよ」
マミ「バカ…」 少し声が弱くなる。
俺は離れていくマミさんを引き留めることができた。
マミさんが、またいつ離れていくかわからない不安を残して、二人の季節は暑さを増していった。
- 347 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:02:59 ID:6jF+s4KZ
- その夜、俺は布団の中で考えごとをしていた。
わかってる。 二人はきっと求め合ってる。
それが叶わないのは、マミさんが意外に世間体を気にするから。 そして、もう0にはできないものがあるから。
俺と出会った時には既に0ではなかった『それ』を捨ててまで、俺を選ぶのはリスクが高すぎるから。 わかってる、わかってる。
何度も自分に言い聞かせた。
- 348 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:03:48 ID:6jF+s4KZ
- 七月下旬。
俺とマミさんは熱気漂うアリーナの真ん中にいた。 そう、この日は例のライブの日だ。
俺は前日マミさんにチケットを渡し「誰か友達誘って行きな」と意地を張ったが、「だいちゃんがあたしのためにとったんだからだいちゃんと行く」と言われ、結局一緒に行くことになった。
会場で場所をとり、開演を今か今かと待つ。 隣にいるマミさんも嬉しそうだ。 一緒に来れてよかった、今更ながらに思う。
- 349 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:04:53 ID:6jF+s4KZ
- そして、開演。
会場は一気に盛り上がりをみせる。 目当てのHYはトップバッター。 ライブが始まり沸き上がる歓声。
最初にふさわしいノリのいい曲。 そして、うまくノりきれない俺!
そう、俺はこの時HYの曲をあまり知らなかった…
マミさんはといえば、曲は知ってるけどライブ初体験でどうしていいかわからない様子。
そういえば、SMAPのコンサートは行ったことがあるけど、それしかないって言っていた。 キムタクと目が合ったらしいが、気のせいだろう…
という訳で、俺とマミさんは手を繋ぎ、とりあえず周りに合わせていることにした…
- 350 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:05:57 ID:6jF+s4KZ
- そして、HYの出番が終了。
感想としては、生で『AM11:00』が聴けたことに感動したことと、マミさんがすごく満足してくれたことが嬉しかった。
この日、俺とマミさんの肌には真っ赤な日焼けができた。 そして、二人の心にはまた一つ消えない思い出ができた。
- 351 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:11:08 ID:6jF+s4KZ
- 八月中旬。
前、中、後期と三期制のこの学校に、短い夏休みがやってきた。 生徒は全員、例外なく実家に帰省する。
久しぶりの故郷にテンションも高まり、友人と遊びまくっていたある日、一通の残暑見舞いが届いた。
マミさんからだ。
- 352 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:12:21 ID:6jF+s4KZ
- 『残暑お見舞い申し上げます。
だいちゃん、夏休み楽しんでる??? そっちはやっぱり涼しい??こっちはね〜やっと涼しくなってきたよぉ♪
それはそうと、前期おつかれ様でしたぁ♪だいちゃんのおかげで毎日楽しかった☆中期もお互い頑張ろーね!!じゃあ、会えるの楽しみにしてまあす♪気を付けて寮まで来てね☆』
- 353 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:13:35 ID:6jF+s4KZ
- 夏休みの間も連絡をとるのを控えていたが、暑中見舞いが来たからにはメールを送らない訳にはいかない。
と、自分に言い訳をしつつマミさんにメールを送る。
俺『暑中見舞い届いたよ、中期に会えるの楽しみにしてるよ!』
確かこんな内容だったハズだ。 そして、マミさんから返信。
マミ『うん、あたしも楽しみにしてる♪』
こんなニュアンスのメールがきた。 俺は早く夏休みが終わることを心の片隅で願った。
- 354 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:15:32 ID:6jF+s4KZ
- そして、夏休みもそろそろ終わろうという頃。
俺は友達と遊んで楽しかったことをマミさんにメールで伝えた。
俺『今日久しぶりに友達に会ってきたよ、すごい楽しかったさ!』
返信はすぐにきた。
マミ『そっか よかったね じゃあね。』
え、マミさんのメールの書き方じゃない…
俺は一瞬の混乱に陥った。 何があったんだ?彼氏にバレたのか?
気になってマミさんにメールを送っても、それ以降マミさんから返事がくることはなかった。
- 355 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:20:01 ID:6jF+s4KZ
- 夏休みが明け、俺は学校の寮に戻ってきた。
俺の心の中には、安心と不安との両方が交互に生まれては消え、とても不安定な状態になっていた。
『今度こそマミさんと離れてしまうかもしれない。』 『でも、マミさんは何回も俺に振り向いてくれたから今度も大丈夫。』
ただ、根拠のない自信で自分をごまかしていただけかもしれない。
- 356 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:21:00 ID:6jF+s4KZ
- そして、マミさんが帰り会う時がきた。
久しぶりに会ったマミさんは、どこか大人っぽくなった気がした。
長い黒髪にパーマがかかったからかも知れない。 いつもならそれをネタに話しかけるのだが、それができないことに苛立ちを覚える。
お互いが話しかけづらい雰囲気を出している。 マミさんは平静を装って友達と話していたが、明らかに『近寄るな』オーラを出している。
俺もそれを察知してマミさんに近寄ることができなかった。
そして俺とマミさんは、そのまま何ヶ月もの間距離を置くことになった。
- 357 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:23:38 ID:6jF+s4KZ
- 距離を置いていた期間はまさに生き地獄だった。
俺はマミさんの気持ちがわかっていたから、なるべく関わらないように努めた。
しかし、嫌でもマミさんは視界に入ってくる。嫌でもマミさんの声が耳に入ってくる。 当然だ、いつでも俺はマミさんを追っていたのだから。
俺は自分が変わらずマミさんを想っていることに罪悪感を感じていた。
もし、マミさんが俺のことを嫌いになってくれたならどれくらい楽だろうかと何度も考え、その度に俺はマミさんを酷い言葉で傷つけていた。
マミさんが俺を避けるように、俺もマミさんを避けるようになった。
- 358 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
13:24:46 ID:6jF+s4KZ
- 自分に嘘をつきながら送る生活は想像以上にツラく、俺は体調を崩しがちになった。
夜も眠れず、食べ物も喉を通らないため、入学当初に比べ体重が8kgも落ちた。
限界が来ていた。
俺が学校を辞める決意をしたのは11月の下旬のことだった。
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