一年間の『ありがとう』

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236 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/20(火) 02:56:51 ID:vQzPqbrc
二人の出会いは去年の四月。桜が満開の季節に俺たちは同じ大学に入学した(ちなみに地元ではまだ雪が残っていました)。
大学は全寮制で校舎と直結、休日でもない限り外界との交流はほぼ無いに等しい。
なので、この学校の生徒はほぼ全員が携帯を持っているという状況だった。
そんな学校で俺はマミさん(もちろん偽名)と出会った。

237 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/20(火) 03:03:30 ID:vQzPqbrc
正式な初対面は入学二日目、その日は初の新入生顔合わせ。
俺はその会場である教室で迷っていた。
教室の入り口に座席の位置は書いてあったので大体の検討はつけて入室したが…

「なんだこれ!?」

予想以上に広い教室と不揃いに並んだ机の列に俺は一瞬で混乱におちた。
大体の検討をつけた座席の位置はもともと曖昧にしか覚えていないため、

「確か12列目の…前から…」

みたいな感じでフラフラしながら教室の一番前、つまり黒板の前を行ったり来たりしていた。
戻ってもう一度確認してもいいけど、変なプライドがそれを許さない。

「ここで戻って確認したらカッコ悪いなぁ」
と考えていた。

238 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/20(火) 03:07:07 ID:vQzPqbrc
実際、迷ってウロウロする方がカッコ悪いと今更ながらに思う。
そんなこんなで、ウロウロすること4、5分…(そんなにウロウロするなよ俺…)

その時…



「席わからないの?」



一人の女性が声をかけてきた。白い肌が透けるように綺麗な女性だった。

もちろん、この人こそマミさんだ。
俺はマミさんに席を教えてもらい、ようやく腰をおろすことができた(マミさんは座席表を持っていた)。

これが俺とマミさんの出会いだった、多分覚えてるのは俺の方だけだと思う。

239 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/20(火) 03:13:19 ID:vQzPqbrc
少し、この学校の説明をしておきます。

この学校では一学年を20人くらいのいくつかのグループに分け、そのグループで行動することになる。男女の割合は大体半々で、男子の方が若干多い程度だった。グループにもよりけりだったが…
あと、全寮制であることは話した通りだけど、部屋は二人部屋で例外を除いてはそのグループの仲間の誰かと同じ部屋になる。もちろん男子と女子は違う寮に住むことになる。

これくらいかな?あと書いてる途中で補足が必要な場合は随時補足していきます。
244 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 02:52:03 ID:8y0dGyEL
それから数日後の或る休日。
グループ内の女の子の誕生会が開かれた。
主役の女の子(以下タエコ)とその子の同部屋の女の子(以下サエコ)を残した全員が会場である教室に集まった。
誕生会の段取りが説明される。

全員が会場に集まる。

合図を送る係がサエコにメールを送り合図する。

サエコはタエコに「グループで話し合いがあるらしい」と伝え、会場に誘導する。

その間、会場にいる全員が会場のどこかに隠れる。

タエコが来たところを見計らって全員が飛び出しクラッカーの嵐。

誕生会開催!!

という感じだ。
そして、全員が集まったのを確認し、合図であるメールを送る。
それを確認し、全員が思い思いの場所に隠れ始めた。
もちろん、俺も隠れる場所を探し始めた。

245 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 03:00:13 ID:8y0dGyEL
あの掃除箱の中がいいか…

はたまた無難に机の下か…

意表をついて入り口横か…

いや、それはないな。


なんて考えつつ、結局机の下に隠れることにした。

どこの机に隠れるのがいいか…

やはりここは入り口から死角になる机の下しかない!!
そう思い机の下に飛込んだ。








一瞬の沈黙。



マミさんと目があった。



どうやら俺と同じことを考えてたらしい。すでに俺の隠れようとした机の下に隠れていた。

246 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 03:03:36 ID:8y0dGyEL
俺「隣、いいすか?」

マミ「早く隠れなよ♪」

俺「あ、失礼します」

俺はマミさんの隣で主役の登場を待つことにした。





…遅い。どうやら寮から会場までの時間を考えていなかったらしい。

マミ「ドキドキするね」

俺「かなり」

マミさんと再び目が合う。
はい、ドキドキしてます。(あなたとは違う理由で…)

笑った時に口許から覗いた八重歯と、一重まぶたのつけマツゲがとても可愛く見えた。

2日前と雰囲気が全然違う。

2日前はオールバックで髪を後ろで結んでたのに、今日はストレートで長い黒髪を全部下ろしてるんですね。すごい色気があるんですけど…

なんて、マミさんに語りかける妄想を体育座りの俺は机の下で繰り広げていた。

247 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 03:08:40 ID:8y0dGyEL
そうこうしてるうちに入り口から物音が…

誰が最初に飛び出すかの探りあいが始まる(たぶん)…

先陣をきったのはグループの男子の一人。彼が会場の電気をつけた(最初は電気を消していた)!!

タエコ「えっ!?」

それを合図に全員が飛び出しクラッカーを鳴らす。
もちろん、俺とマミさんも飛び出す。



あれ?主役どこ?

なんと、タエコは俺とマミさんの位置から結構離れた場所で呆然としながら、クラッカーのシャワーを浴びていた。

俺・マミ「遠っ!!」

走って駆け寄り遅めのクラッカー。
そして、みんなから祝福の声と拍手。

「おめでとう」「誕生日おめでとう」

見ず知らずの女の子の誕生会。
少し変な気もしたけど、なぜかみんなすぐに打ち解けられた気がする。

248 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 03:10:49 ID:8y0dGyEL
誕生会はもちろん大盛り上がり、話は弾み全員の自己紹介タイム。

最初は男子から、みんな気をきかせてギャグを織り混ぜ……ることもなく自己紹介をしていく。

俺はこう自己紹介した。

俺「大地(偽名)です、気軽に大地って呼んで下さい、よろしく」
無難な挨拶

間違いもなければ、盛り上がりもない。
まぁ、初対面なんてこんなもんか…
そんなギャグを言う勇気は俺にはないよ…

男子の自己紹介が一通り終わると、次は女子の自己紹介。
一番最初はもちろん主役のタエコ、少し田舎くささが残るあどけない少女…といったところか、ちょっとかわいい。
二番目はマミさん。
「マミです、よろしくお願いします」
と、こちらも無難な挨拶。
こういうのは女の子は苦手なのか?みんな照れながら自己紹介してた。

249 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/21(水) 03:13:18 ID:8y0dGyEL
女子も全員自己紹介が終わり、トークタイム開始。
もちろん俺はマミさんに話しかける。

俺「マミさんてさ、すごい大人っぽいよね、友達とかに『姉さん』て呼ばれたりしない?」

マミ「ん〜、『姉ちゃん』て呼ばれたりするよ♪」

俺「じゃあ、俺『姉ちゃん』て呼ぶわ」

マミ「いいよ!じゃあ、あたしは『だいちゃん』て呼ぶね♪」


またあの笑顔。
笑うとすごく子供っぽくなる、「無邪気」って言葉が一番ピッタリな笑顔。



その後、誕生会は盛り上がりの中閉会し、解散となった。

この日を境に、俺はマミさんを『姉ちゃん』と呼ぶようになり、マミさんは俺のことを『だいちゃん』と呼ぶようになった。

256 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 01:58:05 ID:p+b7/syf
翌日から学校の授業が開始する。
教室に行く前に食堂に寄り朝食をとる。他の生徒も大勢いる。俺は入学してから仲良くなった友達数人と一緒に食べていた。
ふと、目の前をマミさんが通りかかる。
俺には気付いてない様子…

俺「姉ちゃん!!」
俺は手を振る。

マミ「あ、だいちゃん、おはよう♪」

あぁ、その笑顔が大好きなんですよ。
今日の髪型はオールバック…あ、前髪少しだけ垂らしてる。
なるほど、プライベートじゃないときは基本的にその髪型なんだな。

それからも見かける度、目が合う度、俺とマミさんは挨拶を交した。
そんなやりとりを一週間ほど続けていたある日、俺はあることに気付いた。


メールアドレス知らない…

257 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 02:00:57 ID:p+b7/syf
そういえば、なんで誕生会で聞かなかったんだと少し後悔した。
翌日から土日でマミさんに会う機会がなくなってしまう。
これはアドレスを聞く以外に道はない!!
「思い立ったが吉日生活」な俺。
授業の合間の休み時間にマミさんに聞きにいく。
内心ビビってたけど、それを悟られないよう余裕の表情を作りながら、マミさんのそばに行く。

俺「ねぇ、姉ちゃんのアドレス教えて!!」

マミ「え?いいよ♪あ、でも今携帯持ってないから…リーダーに聞いて!」

マミさんはグループのリーダー(以降こう呼ぼう)を指さす。グループのリーダーなのだから、もちろんグループの全員の連絡先を知っている。

俺「わかった、アドレス聞いたら速攻でメールするから、待ってて!!」

マミ「うん、ありがと♪」

258 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 02:04:23 ID:p+b7/syf
その夜、俺はすぐにリーダーにアドレスを教えてもらいにいった。

俺「リーダー!!マミさんのアドレス教えてください。」

リーダー「いいよぉ、ちょっと待っててね」

携帯をいじりだすリーダー。
緊張してドキドキな俺。
リーダーに緊張してどうするんだ…

リーダー「あったあった、ほら写しなぁ」

俺「あ、ありがとうございます!」

リーダーに携帯を借りてマミさんのアドレスを自分の携帯に入れる。
名前に誕生日とずいぶんシンプルなアドレス。女の子にしては珍しい…なんて思いつつ、あることに気付いた。



誕生日が1日しか違わない!!

259 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 02:07:18 ID:p+b7/syf
つまり、俺の誕生日の翌日がマミさんの誕生日だったのだ。
同じではないにしろ、ものすごい偶然だ。
しかも、俺のアドレスも名前に誕生日とシンプルなアドレスだった。
もちろん、二人のアドレスは似通ったものになってる。
俺は一人で運命を感じつつ(←キモいか)マミさんのアドレスを携帯に入れ終わり、リーダーに携帯を返した。

リーダー「マミさん狙ってるの?」

俺「いやいや、そんなんじゃないっすよ」

リーダー「マミさん彼氏いるんだよ」

俺「マジですか」

ショック。
平静を装いつつ、内心ガッカリ。
いや、今は落ち込んでるよりもマミさんとメールしよう。
リーダーに礼をし、自室に帰ってメールを作成した。

260 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 02:09:42 ID:p+b7/syf
「大地だよ、わかる?約束通りメールしたよ、これからよろしくね」

確かこんな内容のメールだったハズ。

それから一時間ほどしてマミさんから返事が来た。
この一時間がやたら長く感じるんですよね…

「遅くなってゴメンね、お風呂入ってたよ♪こちらこそよろしく」

お風呂…
こういう時少し想像(妄想?)してしまう俺は変ですか?
その日はお互いのことを少し話しながら、すぐにメールは終わった。

261 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/22(木) 02:12:11 ID:p+b7/syf
翌日からはマミさんとメールでいろんな話をした。
好きなもの、嫌いなもの、趣味や特技、家族のことや友人のこと、お互いの恋愛経歴や好みのタイプ、とにかくいろんなことを話した。
マミさんが日本舞踊ができるのは少し意外だった。
そして、話はお互いのメールアドレスの話になる。

マミ「そういえば、だいちゃんもアドレス名前と誕生日なんだね、あたしと同じだ♪」

俺「そうだね、似てるよね」

マミ「しかも誕生日一日違いじゃない?何か運命感じるね♪」

えぇ、俺も感じてましたとも!!
正確にはマミさんが一つ年上だから、マミさんの一才の誕生日の前日に俺が産まれたことになる。
それでもこの偶然は俺にとってすごく嬉しいものだった。
きっとマミさんもそう思ってくれていたハズだ。


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