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- 382 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
14:57:43 ID:6jF+s4KZ
- 翌日、俺は買い物にでかけた。
マミさんの心に何か残せたらいいなと思い、プレゼントを買いにきたのだ。
そして、巨大なショッピングモールを一人で歩くこと1時間、ふと本屋が目にとまった。
何の変哲もないただの本屋だったが、俺は無性に本をプレゼントしたくなった。
俺は本屋の中を隅から隅まで歩いてマミさんに贈りたい本を探した。
しかし、本屋中を見て回るのはやはり時間がかかり、俺は2時間も本屋の中をウロウロしていた。
別に本じゃなくてもいい。
やっぱり違うものにしようか。 そう思いかけていた。 その時、不意に手にとった本の隣に一冊の本があった。
- 383 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
14:59:43 ID:6jF+s4KZ
- 『ありがとう。の本』
ありがとうの本… そのタイトルを見た時にマミさんとの思い出が次々に蘇った。
何度も何度もマミさんと交しあった言葉。 二人の間では特別な意味を持つ言葉。 お互いが笑顔になれる魔法の言葉。
俺はその本を手にとり、表紙を開いた。 そこには、日常の些細なことに対する『ありがとう』がいっぱい綴られていた。
普段から自分の気持ちを言葉にできない俺の、マミさんに伝えたい気持ちがすべて詰め込まれたような本だった。
俺はその本をすぐにレジに持っていき、プレゼント用に包んでもらった。
- 384 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:01:54 ID:6jF+s4KZ
- この本を読んだマミさんは何を思い、何を考えるのだろう?
俺と過ごした日々を思い出してくれるのだろうか? 思い出してくれなくてもいい。
ただ、このプレゼントに乗せて『ありがとう』を伝えたかった。
そして、俺はマミさんを呼び出し本を渡すことにした。
- 385 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:03:33 ID:6jF+s4KZ
- マミさんはすぐにやってきた。
二人は少し気まずい雰囲気の中向かい合った。
俺はマミさんの顔を見ることができずに少しうつ向いたまま、マミさんに本を渡した。 マミさんは、
マミ「え?いいよ、あたしだいちゃんにもらってばっかりだもん…」
と遠慮した。
俺は半ば強引にマミさんにプレゼントを渡した。 そんな遠慮で俺が引き下がる訳はない。 それはマミさんも知っている。
俺「せっかく姉ちゃんのために用意したんだから、受け取ってよ。でなきゃ捨てるしかないしょ?」
マミ「うん、じゃあもらうよ」
と、言ってマミさんは受け取ってくれた。 俺はそれ以上その場にいられなくなり、足早に立ち去ろうとした。
その時、マミさんが俺を呼び止めた。
マミ「だいちゃん!」
俺はびっくりして振り返る。
マミ「ありがとう♪」
どこかぎこちない笑顔のマミさんに、俺もまたぎこちない笑顔で返す。
俺はマミさんに小さく手を振り、その場を去った。
- 386 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:06:07 ID:6jF+s4KZ
- しばらくの後、マミさんからメールが入った。
マミ「だいちゃん、やっぱり行っちゃヤダ」
俺はマミさんが本を読んだのだと確信し、マミさんに「本読んだ?」と聞いた。 案の定マミさんから本を読んだと返事がきた。
俺はマミさんに伝えた。 俺のことを忘れてほしくない。 俺もマミさんのことは忘れない。
マミさんは当たり前だと言ってくれた。 忘れない。 忘れるハズがない。 だから、忘れないで。
お互いに顔も見えないのに、俺はマミさんの涙を感じた。 それは俺も涙を流してるからかも知れないが、確かに二人は同じ気持ちを持っていた。
『そばにいたい』
そして、俺とマミさんは最後の日にデートをしようと約束した。
- 387 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:08:09 ID:6jF+s4KZ
- 翌週の金曜日。
正式な俺の退学の日。 この日を境に俺は学校を辞め、寮を出ることになる。
その夜、近くのお好み焼き屋を貸しきって俺の送別会が行われた。 あの誕生日の日のように…
いつもの飲み会のように楽しい時間が流れる。 いつものように飲んで食べてはバカなことをやって笑い飛ばす。
変なことを言ってはそれをネタに話が盛り上がる。
しかし、それもやはり束の間。
時間はあっという間に流れ、終りの時間まで残り30分を切ってしまった。
その時、グループの女子達が席を立った。
店の電気が半分ほど落とされ、少し薄暗い中女子達が横二列に並ぶ。
- 388 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:09:57 ID:6jF+s4KZ
- マミ「あたしの誕生日に歌を歌ってくれたみたいに、だいちゃんに歌を贈ります」
携帯の着メロが流れ歌い出す。
Kiroroの『Best friend』
みんな歌いながらボロボロ泣き出している。
中には歌えなくなっている子さえいる。 俺はこの歌を聴いたことがなかったのに、この歌の歌詞がなぜか切なくて涙が流れた。
歌を聴いて泣いたのは、これが人生でたった一度きりだ。 歌が終わると、俺は泣き崩れてる女の子達に、
俺「ボロボロじゃん、もっと練習しなよ」
と言った。 もちろん俺もボロボロなので、照れ隠しなのはバレバレだった。
- 389 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:12:01 ID:6jF+s4KZ
- 俺はコートのポケットに忍ばせておいた手紙を取り出し、全員に渡した。
この一週間で書き上げた何十枚もの手紙。
一人一人のイメージに合った絵葉書を一緒に入れてある。 そして、手紙の最後には必ず『○○と出会えたことにありがとう』というメッセージを添えた。
今読まれるのは恥ずかしいので、寮に帰ってから読んでほしいと告げた。
飲み会の帰り道、みんなから手紙やプレゼントをもらった。
もちろんマミさんからも…
マミ「このプレゼントには秘密があるから♪」
といって、黄色い袋を受け取った。
- 390 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:13:54 ID:6jF+s4KZ
- 深夜、俺はみんなからもらった手紙やプレゼントを見ていた。
どれも見ていて心が洗われる。 最後にマミさんからもらった黄色い袋を手にとった。
中を開けると、赤いアルバムと一通の手紙が入っていた。
- 391 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:17:56 ID:6jF+s4KZ
- 『DEARだいちゃん
一緒にいられるのも残りわずかだね。 「大学やめて、地元帰る」って聞いてから、あっという間に一週間たってしまったね。
あたし、この一週間、自分のためにも、だいちゃんのためにも何かしたいって思ってたのに、時間が限られていたのに、何にもできなかった。。。
本当にごめんね。 だいちゃんから本プレゼントされて、あたしも何かをってずっと考えてた。
誰よりも先にだいちゃんのこと知ったから、一番いいものを贈りたいって思って、たくさん考えた。
きっと、だいちゃんなら、あたしがあげるものなら何でも、快く受け取ってくれたよね。
でも普通の(売ってる)モノなら誰だって渡すことができるから、1つしかないものをあげようって思った。
- 392 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:20:00 ID:6jF+s4KZ
- それが、手紙と一緒に渡した、赤いアルバム。
あたし赤スキだから。 そういえば、だいちゃんよく赤パーカー着てたよね。
このアルバムは、あたしが今までで一番時間かけてつくったプレゼントだと思う。
だいちゃんに打ち明けられてから、ずっと考えて、毎日手にして、少しずつ完成させたものだから。。。
あたしのその時Aの気持ちetcがたくさん入ってるはず。 入れたつもりだから。。。
力が入らない時や、淋しくなった時、見てくれたらうれしいな。
- 393 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:22:01 ID:6jF+s4KZ
- だいちゃんと過ごした日々、だいちゃんに感謝されるような事、何一つしてないのに、だいちゃんは何度もあたしにありがとうって言ってくれたよね。
どんなヒドイことしても許してくれたよね、いつもあたしのこと考えてくれて、笑いかけてくれたよね。
だいちゃんがしてくれたこと本当にうれしくて気持ちも受け入れてあげたかった。。。 頭では、いつものように接しようって思っても、全然ダメだった。
たくさん傷つけてごめんなさい。
- 394 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:23:42 ID:6jF+s4KZ
- もっと一緒にいたかったし、前みたく普通に話せるようになりたかった。
時間が解決してくれるって思ったケド、思ったようにうまくいかないね。。。
今、こんな形だけど、あたし、やっぱりだいちゃんと出逢えて本当に良かった。
だいちゃんの存在はあたしにとって大きいものだったんだなってスゴク思ってる。
いることが当たり前で、話しなくても、近くにいるもんだと思っていたから、離れるって聞いて、信じられないのが少しずつ強くなってきた。
冷静になるまでは、泣くことしかできなかったんだケド。。。 でも、離れていくことに慣れてしまうんじゃないかっていうのが一番ツライ。。。
きっとお互いそういう風になってしまうんだろうケド、せめて、二人が過ごした短い時間の一つの場面だけでも忘れないでいようね!
- 395 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:26:10 ID:6jF+s4KZ
- こんなあたしにいつも話しかけてくれたり、笑いかけてくれて本当にありがとう。。。
最後は笑ってバイAしたいから、悲しいムードはなしにするね!
明後日、二人が笑ってすごく良い日になりますように…
FROMマミ』
後半は涙で文字が見えないくらいだった。
- 396 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:28:00 ID:6jF+s4KZ
- 俺は次に赤いアルバムを手に取った。
表紙を開くと、一枚の絵葉書。 『あなたからは たくさん たくさん もらったの。
目にはみえないもの。 でも、とっても とっても 大切なもの。』 と書かれた、柔らかい雰囲気の絵葉書。
- 397 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:29:14 ID:6jF+s4KZ
- 次のページを開くと、四月に行われたグループの女の子の誕生日の写真。
そういえば、この時からマミさんに惹かれ始めた気がする。
隣のページには宿泊研修の行きのバスの中の写真。 ケンカ(?)してたんだよな…なんて思った。
- 398 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:30:11 ID:6jF+s4KZ
- またページをめくると登山の頂上での記念写真。
ちゃっかりマミさんの隣にいる。 少し顔がにやける。
隣には友達のコスプレ写真。 これは詳しくは語るまい…w
- 399 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:31:31 ID:6jF+s4KZ
- 更にページをめくると、また一枚の絵葉書。
『あの時の想いや この時の涙。 むだだったことなんて 何ひとつないんだよ。』
とても優しいマミさんらしい絵葉書。
隣には、マミさんとのツーショット。 お好み焼き屋での誕生会で撮った写真。
マミさんのために歌を歌って、今日はそのお返しに歌を歌ってもらった。
- 401 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:33:03 ID:6jF+s4KZ
- ページをめくると、また二人のツーショット。
誕生会の帰り道、二人で撮った写真。 四隅には二人で撮ったプリクラが貼ってある。
楽しかった日々が次々と蘇る。
隣にはまた絵葉書。 『うれしかったり たのしかったり くるしかったり
あなたといたり。 このひとときひとときが 私にとって宝物です。』
この絵葉書シリーズはどこで売ってるんだろうと考えつつ、書かれた言葉をひとつひとつ噛み締める。
- 402 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:34:15 ID:6jF+s4KZ
- 更にページを進めていくと、また一枚の絵葉書。
『ねえ ひとりじゃないよ しっかり瞳をあけてごらん ゆっくり周りをみてごらん
ほら あなたのそばには こんなに愛が あふれてる』
隣には友人の誕生日で行ったカラオケでの写真。
大きな口を開けてパフェを食べるマミさんが可愛らしい。 そういえば、二人とも甘いもの好きだったっけ。
- 403 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:35:59 ID:6jF+s4KZ
- 次のページにはグループで行った焼き肉の写真。
この時は確か距離を置いてた時期だ。
だけど、偶然二人は隣同士に座ってちょっと気まずかった記憶がある。
隣のページにはまた絵葉書。
さっきまでの絵葉書と違い、Mr.Childrenの『Tomorrow never knows』の歌詞が書いてある。
この歌、好きなの知ってたのかな?
- 404 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:37:19 ID:6jF+s4KZ
- 次のページにはグループの女の子の誕生日で俺と友達がカレーを作った時の写真。
この時は仲が良くて、買い出しに一緒に付き合ってもらった。
全然料理をしない俺にしてはよくできたと思う。
隣のページには体育大会での写真。
例のようにマミさんと同じグループになってしまい、気まずい思いをした。
- 405 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:38:05 ID:6jF+s4KZ
- 次のページにはマミさんの手書きで、
『自分の周り そこにはみんなが待っている。 けして君は一人じゃないから。
安心して大丈夫』 と書かれていた。
隣には登山の時、みんながHAPPY BIRTHDAYを歌ってくれた場所で撮った写真。
みんな思い思いの方向を指差していて、少し笑えた。
- 406 :大地 ◆oWouGftk5w :2005/12/31(土)
15:40:15 ID:6jF+s4KZ
- 最後のページには猫が寝転がってる絵葉書。
『がんばる前のひと休み…』
そして、隣には『だいちゃんのいいところ♪』と題した言葉が書かれていた。
・どんな時でも、人に優しくできる
・何事も一筋である ・自分の意見をしっかり持っている ・歌が上手 ・バスケットが上手
・料理が上手(カレーおいしかったデス) ・理解力が優れている。 ・人のために何かをしようと思える ・行動力がある
・食べ方がキレイ ・誰かを笑わせる力がある ・考えることができる ・人を許すことができる ・誰かを必要としている
・誰かを愛せる
そして、最後に『ずっと誰かを思いやれる人でいて下さい!』というメッセージがあった。
俺はアルバムを閉じて、深い切なさと寂しさ、愛しさを抱き締めた。
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