PAGE6
- 673 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
16:00:43 ID:ZqihJCh5
- そしてその週の金曜日、川嶋さんからメールが届いた。
「ミカからの手紙を預かってるんだけどどうする?」
本来、更に俺の家に郵送してもらうのが一番迷惑がかからないのだろうけど、 その時の俺にはそんな余裕はなく、その日の9時にバイト先のある駅で
川嶋さんと待ち合わせをした。
仕事はたくさん残っていたけれど、周囲に謝り倒して無理やり会社を出た。
駅の改札にはすでに川嶋さんが待っていて、青い便箋を俺に渡してくれた。
俺はその場で便箋を破いて手紙を読み出しそうな勢いだったが、「家でゆっくり
読みなよ」との川嶋さんの言葉で少し冷静さを取り戻し、その勧めに従うことに した。
川嶋さんには何度も何度もお礼を言い、俺は家路を急いだ。期待と不安が 頭のなかで交錯し続け、晩飯も買わずにアパートへと直行した。
部屋に入ると急いでハサミを探した。俺は手先が不器用な方なので、便箋を
手で破くとしょっちゅう中身の手紙まで破いてしまうのだ。それにしてもどうして ハサミというやつは、こう必要な時に限って見つからないのだろう。
5分ほど散らかった部屋を家捜しし、俺はようやく見つけたハサミで便箋をあけた。
久しぶりに受け取る彼女からのメッセージ。
- 695 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
16:18:16 ID:ZqihJCh5
- 手紙の内容は概ねこんな内容だった。
まず、俺がバイト先を訪ねて驚いたこと。そしてそんなに俺を狼狽させるほど
唐突な別れを切り出してしまい、それについてのお詫び。
その次には川嶋さんからすでに聞いていた、実家に帰らなければならなくなった
事情について書いてあった。そしてたぶん、地元で就職することになるということ。
そしてようやく俺とのメールを止めることになった理由について書いてあった。
メールは元々、足りない生活費を補うために始めたこと。初めの内は、なんとか
俺のことを楽しませようと努力していたこと、結果、自分はあまり楽しくなかったこと。
メールを続けていくうちに、彼女にとって、俺とのメールが生活の一部になりだしたこと。
そして段々と俺からのメールを待ち遠しく思うようになっていったこと。 相談にのってあげられて嬉しかったこと。話を聞いてもらって感謝したこと。時には
仕事がきつそうな時に、俺のことを本気で心配したこと。
そんな彼女の側から見た気持ちの移り変わりが書いてあった。
しかし俺とのメールが彼女にとっても支えになるにつれて、お金をとっているという事実が
彼女を苦しめた。そして月に2万ではメールの通信料を差し引けば、生活費を補うのに
十分ではなかった。毎月貯金の残高は減っていき、自分の東京での生活は長くないことを
彼女は自覚せざるを得なかった。
-
- 714 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
16:32:12 ID:ZqihJCh5
- その内、メールの中に「好き」だとか「愛してる」といった単語は入りだし、
びっくりしたこと。本気なのかどうか驚いたこと。そして段々と俺に対して
恋愛感情を抱くようになっていったことが書いてあった。
「一回接客したことがあるだけで、メールしかしたことないのにおかしいでしょ?」
俺が感じていたことと、まったく同じことが書かれていた。
そして一度は俺と直接会って話したいと思っていたこと。お金をとるのなんてやめて
一から人間関係を作りたいと思っていたこと。でもそれにはもう時間が足りないことが 書かれていた。
それでもどうしても会いたくて、バイト先の送別会の会った夜、酔ったはずみでとうとう
俺に電話をしてしまったこと。俺はすぐに迎えに来てくれたこと。タクシーの中で とても幸せだったこと。
会えたことは嬉しかったけれど、週があければすぐに引越しで、幸せな気持ちは長く
続かなかったこと。そのせいで、次の日は一緒にいても辛かったこと。
- 740 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
16:45:26 ID:ZqihJCh5
- 彼女は上京するときに、地元に彼氏を残してきたそうで、遠距離恋愛で
つらい思いをしたことが書かれていた。半年で元彼との遠距離恋愛は終わり、
遠距離恋愛が長続きすることはとても大変なことなのだという彼女の持論が 書かれていた。
ましてやメールでしか人間関係を築いていない自分たちには絶対に無理だと。
そしてメールの中だけで続けていく恋愛は不毛だし、お互いにとってプラスに ならないと。
彼女がきっぱりと俺との接触を絶ったのは、こういう理由だった。
遠距離恋愛など経験したことのない俺には、反論のしようもなく、ただグッタリと
ベッドの上に倒れこむしかなかった。手紙の文面から彼女の意思の強さが 伝わってきて、説得は困難だとはっきりとわかった。
それでもすんなりと納得がいく訳ではなかった。確かに彼女の言うとおりだ。
こんな状況の俺たちが遠距離恋愛で上手くいくとも思えない。めったに会うこともない メールがほとんどの関係で、ちゃんとした愛が育つとも思えない。
でも、恋愛とはそんなに理詰めで考えていくものなのだろうか? もっと感情のままに行動してもいいのではないだろうか?
どうしてもそれを伝えたくて、俺は次の日、彼女への返事を書くために、文房具屋へ
封筒と便箋を買いに行った。
- 749 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
16:52:46 ID:ZqihJCh5
- 彼女へ手紙に書いたのは、俺の側から見た気持ちの移り変わり。
最初は寂しさを紛らわすため。そして段々と本当に彼女のことが好きに
なっていったこと。
彼女の「きっぱりと関係を絶つべきだ」という言い分には納得したこと。
でもそれでも俺は君が好きだし、恋愛はもっと感情的でいいと思っていること。
そして最後に、「俺の方の携帯のアドレスは、ずっと変えないでおくよ」と。
手紙の返事は川嶋さんに渡して美紀へと送ってもらった。それから毎日
彼女からのメールを待っている。名前の後ろに誕生日なんていうアドレスだから 相変わらず迷惑メールはたくさん入る。
でも以前と違うのは、受信する迷惑メールのひとつひとつをしっかりチェックする ようになったこと。
もしかしたら彼女からのメールが混ざってるかも知れないからね。
- 785 : ◆qOJOlxW/1U :2005/10/30(日)
17:06:09 ID:ZqihJCh5
- 以上で終わりです。
変な切り方になっちゃいましたかね。
彼女からのメールの返事は相変わらずありません。
俺の方ではもう待つことしかできませんから。
2ちゃんにこのことを書いたのは、もしかしたら彼女が読むんじゃないかと思ったからです。
写メールに名前と日付書いた文字を入れるなんて、完全に2ちゃんの発想だと思ったので
彼女はひょっとしてねらーなんじゃないかと思ったんです。
文章書くの遅くてすみませんでした。
面白いといってくれた人がたくさんいて嬉しかったです。
明日から仕事で風邪をちゃんと治さなきゃいけないので、俺はここで落ちますね。
ありがとうございました。
TOP
|
|
|