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- 1 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:05:33
ID:K04dU7v/
- 3ヶ月くらい前にケータイにメールが入った。
社会人2年目で学生時代の友達とも連絡が途絶えがち。
会社の同期とかとはあまり気が合わず、おまけにここ1年くらい彼女もいない。
最近入るメールといったら出会い系の迷惑メールくらいで、その日も会社帰りの 電車の中で疲れきった状態でそのメールを見たんだ。
- 4 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:09:52
ID:K04dU7v/
- ただの広告メールだと思って開いた。
案の定広告メールだったんだけど、内容は普段来るような奴とは一風変わっていた。
内容を要約すると月2万で20歳の女の子がメル友になってくれるというものだった。 「癒してあげます」という言葉に俺はひかれた。
もう毎日仕事で疲れきっていて、少しでも癒されたかったから。
申し込みのURLが貼ってないのも普通の出会い系のメールとは違ってた。
どこにも連絡先が書いてない。 とりあえず偽装のメルアドかどうか確かめようと思ってそのメールに返信をしてみた。
内容はどのくらいの頻度でメールくれるの?っていう質問。
- 7 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:16:32
ID:K04dU7v/
- 返事はすぐに来た。
返信はできるだけすぐに返すし、こっちからもメール出したりもするよ、という内容だった。
正直に言って、こんなメールのやりとり自体が久しぶりだった。 ずっと仕事のメールと迷惑メールしかこなかったからね。
ただそもそも、相手が本当に女なのかもわからないし、やっぱり怪しさ十分だった。
あとで変な請求書が来たりしないかな、と詮索してたらまたメールが着信した。
「とりあえず3日間お試し期間として無料で相手してあげるから、それで決めて」
フリーメールでもないし、携帯の生アドレス同士。ちなみに俺はSE。
これで架空請求みたいな詐欺に合うことはないだろうと踏んで、俺はそのお試し期間 とやらをお願いし、メールのやりとりが始まった。
- 9 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:23:29
ID:K04dU7v/
- メールのやりとりは、まずお互いの自己紹介から始まった。
まずはお互いの名前。当然偽名。
俺は隆と呼んでもらうことにし、向こうは美紀と名乗った。
自分が会社員でSEであることなど、経歴を正直に書いていった。
向こうは仕事については秘密だそうだ。案外これだけが収入源だったりするのかも知れない。
暇な主婦がやってるかも知れないし、実は無職のおっさんが相手かも知れないが、
そのあたりは気にしないことにした。
いつも死ぬほど長く感じる電車が、その日はあっという間に自分の駅へと到着した。
それだけでも何か癒された気になった。恋愛は老人のボケ防止にいいと言うが
きっと本当なのだろう。架空の有料擬似恋愛のメールでも俺の気分は随分とフレッシュになった。
- 12 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:28:57
ID:K04dU7v/
- ちょうど電車が駅に付く頃、メールの返事もダレてどうでもいい内容になってきた頃だったので、
返信せずにメールのやりとりを一旦終了させた。
家に着くといつもの散らかったアパート。
とりあえず風呂にお湯を張り、着替えてお湯に使った。
少し冷静になり、メールの相手のことを考えた。
まず気になったのはどうやって俺のアドレスを知ったのか。
名前に誕生日というオーソドックスなメルアドなので、たまたまなのかということ。
あとはやはり本当に女なのかということだけが気になった。
25の仕事漬けの彼女もいない男が、おっさんとのメールに喜んで金払ってたら
悲しすぎるからね。
- 14 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:37:24
ID:K04dU7v/
- 風呂上りにメールを出した。
「とりあえず、何か美紀が本当に女だってことを証明できないかな?
メールだけだと性別もわからないから、これじゃちょっとね」
しばらくメールを待つ。この感じも久しぶり。なんて返事してくるんだろうという
期待感と、怒らせるようなことを書いてしまったのではないかという不安感が
入り混じった、苦しくも心地よい感覚。メールをまつ5分が10分にも15分にも
感じられる。
しばらくするとメールが入ってくる。
「パソコン用のマイクついたヘッドホンか何かある?
それで声聞いてもらえば証明になるかな」
なるほど。こっちとしても電話番号は教えたくないのでこれなら確認できるだろう。
もしかしたら偽者を用意されるかもしれないけど、夜の12時近くにそんな手際よく
代打をたてるのも難しいだろう。
俺はそれで納得し、あとはお互いにスカイプの捨てIDを登録してメールで連絡しあった。
- 15 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:45:58
ID:K04dU7v/
- ログインしてPCの前でしばし待つ。
美紀らしい人物から承認依頼が来て、OKをするとすぐにコールが鳴った。
「もしもし」
「はい」
「もしもし、隆、聞こえる?」
何のためらいもなく呼び捨てにされる。まあ擬似恋愛なのだから
「さん」づけや「君」づけではおかしいんだが。
「うん、聞こえてる」
「どう?ちゃんと女の声でしょ?」
「うん、女の子だね」
「疑り深いねえ、まあ仕方ないけど」
意外と若い声。ちょっとギャルギャルしい話し方。
俺とはあまり縁のないタイプの人種。
「若いね、声とか話し方とか」
「そうかな?でももうこれ以上は無しね。ケーヤクガイだから。ではとりあえず
3日間、メールよろしく。」
挨拶をしてスカイプは切れた。意外とサービス内容については厳しいようだ。
まあメールの方で品質が伴えば問題はないんだけどね。
- 18 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 21:55:58
ID:K04dU7v/
- コンビニ飯を腹に納めながらテレビを眺める。
しばらくしてメールが着信。
「女だってことは納得してもらえたかな?もう寝るね。オヤスミ」
元カノと別れたのが社会人になってすぐの頃だから、約1年ぶりの
オヤスミメール。
「オヤスミ。その内、顔も見せてもらいたいな」
調子にのって写メを要求してみる。
「顔は無理〜。今度こそ本当にオヤスミ」
メールのやり取りだけだと完全に恋人気分。
これなら2万払ってもいいかなと思う。寂しい男だと思われるだろうけど
女運と言うのは一度離れてしまうと中々戻ってこないもの。
最近じゃ合コンの誘いも少ないし、仮に誘われてもドンドン消極的になってる自分がいる。
- 21 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 22:09:10
ID:K04dU7v/
- その夜考えてたことは、お金の支払方法。
まさか携帯会社から請求はこないだろうし、カード決済も無理だろう。
そうなると振込みか手渡しになるのかな。などなど。
お金で手に入れる奇妙な関係。傍から見ればこれほど虚しいものは
ないんだろうけど、俺はまるで久しぶりに彼女でもできたかのような気分で
久しぶりに上機嫌で眠りについた。
翌朝はいつもどおり6時起床。朝食は食べない方。
7時ちょい過ぎの電車に乗って出勤。
8時近くになって、まだ次第に混雑がひどくなる電車の中で携帯が震える。
「おはよー。もう起きてるよね?出勤途中かな。仕事がんばってね」
おはようメールまでくれるとは中々仕事熱心な業者さんだ。
ただ、鉄の棒を握って社内の混雑に耐えてるお兄さんには、メールは読めても
返事は書けないんだな。しばしお待ちを。
電車を乗り換えるターミナル駅で歩きながら返信。
「電車混んでて返信できなかった、おはよう。もうこの時期は車内蒸し暑くて地獄だよ」
- 22 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 22:17:59
ID:K04dU7v/
- またすぐに返信。
「あたし満員電車は絶対ダメ。もうせまいし気持ち悪いし、この季節は特にダメ」
ここまで強調するってことは、満員電車には乗ってないんだろうな。
これでOLとかの線は消えた。フリーターかニートかも知れない。
いやでもこのメールも「仕事」だからニートではないか。
こんな風にして、メールのやりとりは始まった。
ただ困ったのは話題だった。基本的に向こうの素性は明かして貰えないので、
質問はNGになってしまうことが多い。
あとは恋人同士なら週末にどこに行くかとかで盛り上がれるんだろうけど、
顔を会わせることの無い俺たちには無理な話題。
擬似恋愛の弱点がお試し期間中にすでに露呈。
そして3日が過ぎて、その日の朝にお試し期間終了のメールが来る。
「3日たったけどどうする?月2万で続ける?」
「ちょっと考えてもいい?」
「いいよ。できたら今日中に返事ちょうだい」
- 24 :名無しさんの初恋 :2005/10/28(金) 22:24:27
ID:K04dU7v/
- とりあえずこのメールが月2万に値するかを考えた。
とりあえず、彼女もいない残業だらけのSEとしては、別にこのくらいの出費は痛くない。
そしてなんというか、メールをやりとりする恋人のような存在がいると、例えそれが
お金で買った擬似的なものであっても、頭のキャパが結構そっちに裂かれて、それが
いい具合に仕事のストレスを軽減してくれるのだ。
すぐに話題が尽きるような気もするし、やりとりがワンパターンになって飽きるかも
しれない心配もあった。でもまあその時は解約させてもらえばいいか。
その日の帰りの電車で俺は返事のメールを送った。
「あなたを私の有料メル友として採用いたします。ではしばらくの間よろしく。」
「やった!こちらこそよろしくね!」
メールの文面からも向こうの喜んでる様子がよくわかった。
顔がわからないのでイマイチ想像力がかきたてられないのが残念だったが。
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