僕の心を解放した恋愛〜あやについて

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アヤについて
僕に一つ年上の従姉妹がいるということは、物心着いた頃には知っていた。

でも子供の頃の思い出はごくごく少ない。
距離が遠かったこともあったのだろうけど、唯一記憶に残っているのは音楽会での話。
その日、フルート奏者であった親戚の音楽会に行った僕達は、記憶に残る範囲では初めて出会った。
二人とも小学生だったから、音楽会には興味はない。
むずがる僕達にお金を渡し、母達はこう言った。
「何でも好きなものを二人で食べてきなさい・・」と。

僕の家はいつもそう。
都合が悪くなればお金を渡す。
年端もいかない、お金の使い方も知らない子供に対しても。

そんな家と両親が、僕はずっと嫌いだった。
子供の心には関心がない。
都合の悪いことからは目 をつむる。
そして、子供に対する関心・評価は全て勉強へ。

しばらくして、両親には両親なりの苦悩があったことを知るのだけれども、それはずっと先の話。
アヤと愛し合い、そしてお互いの家のことやどうすれば幸せになれるのかを話した後のこと。

ともかく音楽会の夜に僕は初めてアヤと出会った。
その時に話したことは全く覚えていないけれども、人に懐くということが無かった僕が妙に懐い
てしまったことだけは覚えている。
同じような家庭で育ち、そして僕より長く自分の幸せについて真剣に考えていたアヤがお姉さんのように思えたのかもしれない。

ただ、僕にとってアヤの存在を意識するようになったのはもっと先の話。


とは言え、アヤのことは母親からよく聞いていた。
部活では主将をしていて、近畿大会に出るくらいの実力だということ。
まぁそれなりの学力の女子校でずっと成績が一番だということ。
そして家の手伝いもよくするし、誰に対しても優しい、いい子だということ。
およそ他人に厳しい母にしては珍しく、アヤについては褒め言葉しか出てこなかった。

でも、アヤが本 当はもっと暗い面を持った人だということを僕は知ることになる。
ずっと走っていたのは、走っている間だけは寂しいことも悲しいことも考えないでいられたから。
勉強ばかりしていたのは、父親にちゃんと認めてもらいたかったから。自分がちゃんと社会で認められないと、母親も幸せになれないと思ったから。
(奇しくもそれは、後に綾が医者になりたいと言ったのと同じ理由だった)
誰に対しても優しいのは、自分が異常に感情的な分、他人の感情に対しても敏感だったから。

僕がアヤのことを意識しだしたのは高校三年になってから。
と言ってもそれは恋愛感情では全くない。
僕が高校二年の時、アヤは受験に失敗し、そして浪人していた。
僕と同じ受験生だった。
アヤのことを意識したのは、彼女の名前がいつも模試の成績優秀者の最上位にあったから。
僕もそれなりに出来る方ではあったけどアヤの域には及ぶべくもなく、記憶も微かな従姉妹について、僕は甚だ興味を抱いていた。
大学受験なんて遊びみたいなものでしかないのに、どうしてここまで一生懸命になれるのだろうと。
後に知る事になるけど、その頃のアヤは本 当に不安定で寂しがりで、何度も生きているのが嫌になったそうだ。
勉強をしていないと自分を保てなかったらしい。

一方その頃の僕は、全ての人間に対して閉鎖的で、懐疑的で。
誰も信用できず、誰に対しても攻撃的だった。

そして一年後、僕達は再会することになる。
僕達は同じ大学に入った。
僕達の父親と同じ大学に。
子供の心に関心のない父親を毛嫌いしていたはずなのに。
久々に出会ったアヤは、あまり女性に関心の無かった僕の目 から見ても綺麗な人だった。
完璧な卵型の顔にごくごく薄い化粧をし、そして清楚な服装。
何より、大きくて、そしていつも少し潤んだ悲しそうな瞳が印象的だった。

アヤと仲良くなった頃、僕は人生に迷っていた。
俗に、
「勉強は出来るけど頭は悪い」と言われる人はいると思うけど、僕はまさにその典型例。
要領が良かったせいか、2chでも叩かれない程度の学歴を中学・大学受験と手に入れたけれども、それ以外には何も無い人間だった。
漠然と人生に不安を抱いていた。
僕は子供の頃からずっと何かを頑張って生きてきた訳ではない。
むしろ本 当はその逆。
楽な方に楽な方に流され、そしてひどく攻撃的で、感情的な子供だった。

それに対してアヤは、自分の人生に一部の迷いも無い人に思えた。
いつも明朗快活で優しくて、そして勉強をしっかりとしていた。
僕は、アヤのように頑張って生きていれば、いずれ幸せになれるのかなと思った。
その頃の僕にとってアヤは恋愛対象ではなく、憧れの対象だった。
自分が幸せになるための方法を学ぶ相手として。
そして僕はアヤの思想に徐々に徐々に惹かれていった。


つづく・・・


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