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- 801 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/24(木)
01:10:38 ID:ALpNF4wp
- その日の彼は、自分からメールを送ってきたことは別にしても少し変だった。
やけに饒舌だし、返事も早いし。
そして無理をしていることははっきり分かった。 誰かと話していないと落ち着かないのだろうなと。
私は聞いた。
「今日は少しいつもと違う気がするのだけど、何かあったのですか?」 と。
最低だ。何かあったも何も、私が彼を平静でいられなくするような何かを したのだから。
少しの間があって、彼からメールが返る。
今日は悲しいことがあった・・のだと。 そして私は彼の口から聞いた。
- 802 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/24(木)
01:11:02 ID:ALpNF4wp
- 子供の時に両親から虐待を受けていたこと。
そのせいで未だに他人を警戒し、心から信頼することができないこと。
自分に自信がなくて、必死に勉強して仕事をしてきたけれども、未だに 自信を持てないこと。
それから・・この人なら仲良くなれるのかもしれないと思っていた人に、 どうやら嫌われてしまったらしいことが、今日分かったのだということ。
他人に期待なんてないはずなのに、今更おかしいでしょ。 そう、彼のメールの終わりには書いていた。
それを見て私はとても悲しかった。
だって彼がいつも寂しそうにしていたり、他人を警戒していたりした 理由が、子供の頃のそんな辛い経験によるものだと知ったから。
でも情けないことに、私はそれが少し嬉しくもあった。 彼を傷つけたことはとても悲しいことだったのだけれども、それでも
店員としての私を、彼が気にかけてくれていたことが分かったから。 そしてメル友としての私を、彼は話し相手として選んでくれたから。
人間として最低だなと思います・・orz
- 837 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/26(土)
01:11:20 ID:97RzxuZz
- 私は彼からのメールをしばらく返すことが出来なかった。
上にも書いたように私の家は母子家庭で貧乏だったけれども、
虐待されたこともなければ、彼のように必死に勉強に仕事に 頑張ってきたわけでもない。
そして彼は、強烈に誰かに自分を受け入れてもらいたがって いるというのはメールの文面や日頃の態度からよく分かった。
そんな彼のことを、果たして私のような人間が受け入れられる のかな・・と。 ちゃんと理解して、幸せにしてあげられるのかな・・と。
私は変に理想主義なところがあって、自分が結婚するなら、 絶対にお互いのことを理解しあい受け入れた上でじゃないと 駄目だと思っている。
両親が不仲で離婚したというのが、そう感じるに至った一番 大きな理由。 そして付き合う時、人を好きになる時は、必ず結婚を前提に
考えてしまう。
(俗に言う重たい女です・・orz)
- 839 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/26(土)
01:23:05 ID:97RzxuZz
- その日、私は空っぽの頭をフル動員して考えた。
自分が彼のことをどう思っているのか。 自分がついた嘘を彼に話すことは出来るのか。
そして、彼がどんな人で、私は彼に対して何か出来ることが あるのか。
考えて考えて、私の頭は大混乱に陥ってしまったけれども、
一つだけどうしても譲れない思いがあった。 彼を幸せにしてあげたい。 私を好きになってよかったと心から思わせてみせたい。
そう思った。 だって、彼は誰からも好かれる人。 謙虚で優しくて礼儀正しくて、単なる店員さんにもちゃんと 気遣いをしてくれる。
私も含めうちのスタッフはみんな彼のことが好きだった なのに、自分は誰からも好かれることはないと思っていたり、
自分に自信がなかったり、そんな風に彼が思ったままでいる ことに私は我慢できなかったから。
だから、私は彼にメールを送った。
今まで沢山辛い思いをしてきたんだろうけど、それを一つずつ 乗り越えてきたあなたはとても魅力的です。少なくとも私は、
そんなあなたに魅かれています。 だからもっと自分に自信を持ってください。 自分が思っているよりもずっと、あなたはみんなから好かれて
いると思うし、魅力的な人です。 私はもっとあなたのことを理解したいと思うし、どんな話を
聞かされてもあなたはあなただから、ちゃんと受け入れられ ます。
と。
そしてその日から、私の人生は目まぐるしく動き始めた。
-
- 865 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/27(日)
00:57:17 ID:hQVCYS6A
- その日から、私と彼はすっかり親友になった。
今まで考えてきたことや今考えていること、将来の夢や希望についても 話した。
彼は将来は独立して自分の事務所を持ちたいと思っていること。 子供は大事にしたいと思うけれども、今の自分にはまだとてもそんな
余裕は無いということ。 私は将来は母親になって自分がしてもらえなかった分も子供に愛情を 注ぎたいと思っていること。
でも彼と同じように、まだ自分に完全に自信を持てないから今すぐ子供 が欲しいとは思えないということ。
控えめに見ても、その頃の私達はお互いに好意を持ちながら(私は積極的に、 彼は消極的に)お互いを探り合うような状態が続いていた。
二人とも慎重だったから、じっくりじっくり相手を見極めようと。 でも見極めた先の結論はもう決まっていた。 少なくとも私に関しては。
私は彼のことを好きだったし、出来れば私の力で幸せにしてあげたい なと思っていた。 そしてその気持ちは今でも全く変わらない。
- 867 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/27(日)
01:24:23 ID:hQVCYS6A
- 私には父親がいないし、彼には本当の意味で親と呼べる存在がいない。
二人とも肉親の愛情を感じることなく育ってきた。
そんな私達が仮に付き合って、結婚することになったとしても、幸せな 家庭を築けるのかどうか私には全く自信がなかった。
幸せな家庭というものがどんなものなのか、漠然と意識してはいたけれ どもどういう風に築けばいいのか分からなかった。
その話を彼にした時、彼はこう答えた。 「それは僕も一緒です。自分が幸せな家庭を築ける自信はまだありません。
でも、自分が少し悲しかった分、子供や奥さんにはしっかりと愛情を注いで 大事にしたいと思うから、そういう気持ちがあればちゃんと幸せな家庭を築
けるのじゃないのかな。 正直な話、僕はあなたに魅かれています。会ったこともないのにこんなこと
を言うと引かれてしまうかもしれないけど、あなたには自分の過去や考えて いることをちゃんと話せるし、話していると落ち着きます。こんな人と付き
合ったり結婚したりしたら、ちゃんと幸せな家庭を築けるんじゃないのかな と思ってます。ルール違反かもしれないし、がっかりさせてしまうかもしれ
ないけど、良ければ一度会ってみませんか?」
- 887 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/29(火)
00:46:49 ID:axv2WcYU
- 私は彼からのメールを何度も何度も読み返したけれども、結論は決まっていた。
彼に会いたいこと。
よく行くお店の店員でもなければ、メル友でもない。 もっと対等な立場でまた関係を築いていきたいこと。
それはもう私の中で、どうしても抑えられない希望だった。
でもその前に私には、彼にちゃんと話さなければいけないことがあった。
- 890 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/29(火)
01:04:47 ID:axv2WcYU
- その日、私は彼に今までのことを全部話した。
出来るだけ誠実に正直に、真実だけを。
私は彼にずっと好意を持っていたこと。 顧客名簿に電話番号が載っていたのを見て、思わず メールをしてしまったこと。
メールで話している内にもっともっと彼のことを好き になっていったこと。 でも、自分が卑怯な手段を取ってしまったことに関して
は時々とても悲しい気持ちになって後悔していたこと。 店員さんとしての私に興味を持ってくれて、本当はとても うれしかったこと。
でも、携帯番号を聞かれた時には真実を話す勇気がなくて、 泣いてしまったこと。 彼を傷つけてしまってとても後悔していること。
その後、彼の家庭の話や暗い一面を聞いたけれども、ちっとも 嫌じゃなかったこと。 むしろもっともっと好きになっていったこと。
そして、今すぐにでも会いたいということ。
私にとっては、今までで一番長い、そして心を込めたメールでした。
- 891 :◆bfrlm1kjiw :2005/11/29(火)
01:06:19 ID:axv2WcYU
- でも・・彼からすぐに返事は着ませんでした。
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